令和3年度 地域連携・研究推進センター活動報告書第8号
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4)大人と子供 46何かを学習する、記憶する、あるいは何らかの感情がわくといった私たちの脳の働きは、まず何かに注意を向けるということから始まります。つまり、前庭器官の刺激によって何かに注意が向けられ、それが運動以外の脳機能の発達にも一役買っている可能性が示されたことになります。 子供がブランコに乗るのが「なぜ」好きかという問いに対しては、神のみぞ知るといったところで、そもそも答えようがありません。しかし、ブランコに乗ることによって、さまざまな脳機能の発達が促進されていると考えることは少なくとも出来そうです。そこで、とりあえずここでは、耳の中のブランコを揺らすことを私たちは直観的に好ましいものとして評価していると考えておくことにします。 では大人になるにつれ、この評価は変わっていくのでしょうか。大人の場合は、大脳の古い領域での評価に、もうひとつ新しい領域での評価が加わります。子どもの評価は直観という軸の上での一次元での評価でしたが、大人ではもう一つの軸が加わって、二次元で評価するようになります(図2)。 大脳の新しい領域が成熟するということは、運動に伴う興奮や注意レベルをさげることでした。したがって大人で新たに加わった軸は、運動に伴う興奮の大小を表していることになります。大脳が成熟するに従い予測精度が向上し、興奮の度合いや運動に向けられる注意は小さくなります。例えば、子どもを公園に遊びに連れていって、自分も久しぶりにブランコに乗ってみたとします。最初のうちは大きな興奮が呼び起こされるかもしれません。あるいは逆に子供の時ほどは上手く乗ることができず、あちこち注意を払わなくてはブランコから落ちてしまうかもしれません。しかし2度3度と乗って行けば感覚誤差はどんどん小さくなり、それにつれて興奮や注意も小さくなります。これがいわゆる「飽きてきた」状態です。 しかし子供では、そもそもこの軸が短いので、どれだけブランコにのっても予測が向上する余地は少なく、乗るたびに大きな興奮状態が得られ、「飽きることなく」なかなか降りてくれない、と考えることができそうです。 3. 蛇足 今回、子供のブランコ好きについて勝手気儘に考えているうちに、その脳のしくみが意外にいろいろな話題に関連づけられる(かもしれない)ことに気付きました。例えば、お子さん、お孫さんについて次のような悩みをお持ちの方はいらっしゃるでしょうか。 「うちの子は何をやっても長続きしません」 長続きしない理由は様々あるでしょうが、小さいお子さんなら、今やっていること

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