令和3年度 地域連携・研究推進センター活動報告書第8号
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47が、そもそも直観的な「好ましさ」を感じるような対象ではなのかもしれません。もう少し大きなお子さんが「飽きる」ということでしたら、大脳の予測精度が上がってきたサインと前向きに捉えるべきかもしれません。この場合は、予測を裏切り続けてくれる何かが必要です。少なくとも、説教や反省文は意味がないでしょう。 「子供の食べ物の好き嫌いに困っています」 ブランコに乗った感覚が大脳で二つの視点で評価されるというお話をしました。味覚や嗅覚についても同じことが言えます。そして子供が主に直観的な評価を下すというのもそのまま当てはまります。つまり子供は生き抜いていくのに有利なように、生まれながらに好ましい味と好ましくない味を区別します。好ましいのは甘味とうま味で、これは自分にエネルギーを与えてくれます。好ましくない味は苦味と酸味で、これはその食べ物が毒を含んでいる、腐っていることを意味します。したがって子供の味覚は単純であるべきで、好き嫌いは必要悪です。仮に子供に成熟した味覚があり、道端の雑草を口に入れては、「すごく苦いし舌先もピリピリするけれど悪くない」とか言いながら食べ続けるようでは、いずれ悪いものに中るでしょう。生存には不利なわけです。これも大脳で二次元的評価が可能になる時期を待てば自然に解決して行くことも少なくないでしょう。むしろ問題なのは-この期間を我慢できずに良かれと信じて余計なことをしてしまう-大人のほうかもしれません。 「最近、子供が嘘をつくようになりました」 ある調査では子供が初めて嘘をつくのは5歳前後ということです。それ以前のお子さんは、「おじいちゃんお口がくさい」みたいな本当のことをついつい言ってしまいます。 嘘をつくためには、その嘘が相手に通用するかどうか、本当のことを言うと相手が傷つかないかどうかといったシミュレーションが欠かせません。ですから、お子さんが初めて嘘をついた日は、大脳のシミュレーション記念日として盛大にお祝いしましょう(私は説教してしまいました)。 どのお悩みも解決にはほど遠いのですが、脳の視点から眺めてみると、すこし景色が変わったような気がしてきませんか。

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