令和3年度 地域連携・研究推進センター活動報告書第8号
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495.講座の概要 1. 脂質の消化吸収と栄養 脂質の定義は「水に溶けず、有機溶媒に溶ける物質」と大雑把で、脂肪(中性脂肪)・脂肪酸・複合脂質(リン脂質など)・ステロール・ステロイド・カロテノイドなど様々な物質が脂質に分類され、これらは様々な食品に含まれている。食品中の主要な脂質である脂肪のの消化の大部分は、小腸管腔内で行われる。小腸では胆汁酸と膵リパーゼが協調して働き、水に溶けない脂肪を加水分解してモノアシルグリセロールと脂肪酸に変えることで吸収を可能にする。吸収された脂質はリポたんぱく質に組み込まれて血中を巡り、脂質は全身に輸送される。 2.脂肪と脂肪酸の違い 食品中や体内に存在する脂肪(中性脂肪)の大部分はトリアシルグリセロール(トリグリセリド)である。トリアシルグリセロールはグリセロール1分子に脂肪酸3分子がエステル結合したもので、このエステル結合を加水分解する酵素がリパーゼである。体内で脂肪組織に蓄えられている脂肪は、ホルモン感受性リパーゼなどによって加水分解される。生じた脂肪酸は血中を運ばれるが、この血中に存在する、エステル結合をしていない脂肪酸を特に「遊離脂肪酸」と呼ぶ。 3.脂肪酸の特徴と体への作用 食品中の脂肪酸は脂肪酸の状態で含まれているのではなく、脂肪(トリアシルグリセロール)として含まれているが、それらの脂肪酸に含まれる炭素原子や二重結合の数は様々である。飽和脂肪酸(二重結合を含まない脂肪酸)は牛肉、豚肉、鶏肉、バターなど動物性食品に多く含まれ、常温で固体である。飽和脂肪酸の過剰摂取は血清コレステロール値の上昇や動脈硬化の原因となる。不飽和脂肪酸(二重結合を含む脂肪酸)は植物油(サラダ油など)や魚油に多く含まれ、常温で液体である。不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸に比べて生活習慣病のリスクは低いとされる。不飽和脂肪酸のうち、n-3系脂肪酸(α-リノレン酸など)とn-6系脂肪酸(リノール酸など)はヒトが合成できない必須脂肪酸である。

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